2021年12月5日(日)21:00~
第19回元トレ@オンラインを開催しました。
今回はトレーナー活動をしながら大学院にて脳震盪の研究をされている塩原由佳さんをお招きして、「脳振盪に関する3つの研究テーマ」についてお話いただきました。
塩原 由佳
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
早稲田大学スポーツ科学研究科 修士課程1年
・早稲田大学米式蹴球部
・慶応義塾大学ソッカー部女子
・埼玉県立滑川総合高校女子バスケットボール部
脳振盪に対する3つの視点
塩原さんは大学時代からアメリカンフットボールの現場でご活躍されており、最も身近に感じる脳振盪について研究を始めたそうです。
その背景には脳振盪に対する様々な疑問や葛藤があり、スポーツ現場最前線で活動するトレーナーならではの視点から、時系列に沿って3つのテーマについて解説していただきました。
脳振盪の発生状況
「チームとして怪我の予防に対する協力体制を築いていきたい」
そう仰っていた塩原さんは「脳震盪と他の傷害において発生状況に違いがあるか」にフォーカスして研究をされています。
それぞれのチームに合わせた予防策を立てるためには、脳振盪のリスク因子に対する予防策だけでなく、発生時期や発生状況に関する知見やデータが必要になります。
もしも発生した時期や状況にある傾向が見られれば、それに応じて練習スケジュールや強度調整を行うことで脳震盪の予防に対するアクションが出来るかもしれません。
ルール改正もその一つで、選手を取り巻く環境をより良い状況にしていくために、現場のトレーナーがすべきことについて考える機会となりました。
症状と評価
症状が多岐に渡る脳振盪において、特に試合でヒートアップしている時など、受傷直後に脳振盪であるか否かを判断することが難しい場合もあると思います。
セカンドインパクトによる不幸な事故を防ぐためにも、事前にチーム・選手への病態説明を行い、発症を疑う場合の対応について同意を得ておくことが望ましいでしょう。
トレーナー自身も焦りや感情に惑わされないように、評価フローを作成し、客観的かつ冷静な判断ができるよう日々イメージをしておくことが大切かと思います。
塩原さんは特に「症状が長期化する事例」について、どのような傾向があるか探っているとのことです。
復帰と予後
脳振盪の受傷後は、最低限の安静期間を設けるとともに、症状が消失したことを確認してからプレーを再開することなります。
「段階的に復帰をする」ということが重要で、一般的には7日以上かけて段階的に復帰を目指すGRTPプログラムが多く用いられています。
従来は「症状が消失するまでは安静」とされていましたが、安静にしていても症状がなかなか改善されないケースもあり、近年では適度な有酸素運動が効果的であるのではないか、ということが言われています。
それに伴い2016年の国際会議における復帰プロトコルの提言では、第1ステージが「症状が消失するまでは安静」から「症状を悪化させない範囲での日常生活」に変更されました。
また脳振盪から復帰した選手において、下肢の急性外傷リスクが高まるといわれています。
この研究は比較的新しいもので、現場的な評価だけでなくその明確な根拠について調べていきたいとのことでした。
研究の詳細について記事にすることは出来ませんが、それぞれのトピックについて有意義なディスカッションを行うことが出来ました。
未来のある研究に可能性を感じるとともに、我々トレーナーに課されているものを改めて再認識する機会となりました。
塩原さん、2021年ラストを飾る素晴らしい発表をありがとうございました!!
ご参加いただいた皆さまもありがとうございました!
2021年を終えて
今年は全9回の元トレ@オンラインを開催しました。
第11回 年始にやっておきたいこと
第12回 高校サッカーでのコンディショニング
第13回 トレーナー、フィジーク競技者の2つの立場から語るダイエット
第14回 英論レビュー(5)
第15回 ビーガンとアスリート
第16回 “当たり動作”の評価
第17回 元トレ’s BAR
第18回 筋痙攣について
第19回 脳震盪3つのテーマ
延べ50名以上の方にご参加いただき、毎回話足りないほどの情報量と新しい気付きを得ることが出来ました。オンラインといえども、そこにはいつも温かい空間が存在し、私にとってかけがえのない時間を過ごすことが出来ました。
心より御礼申し上げます。
来年も元気いっぱいトレーナー勉強会、略して「元トレ」を宜しくお願い致します。
次回オンラインについては公式LINE、Instagram、Facebookの更新をお待ちください。
それでは、皆さま良いお年をお迎えください(^ ^)